藤田深志は片手でハンドルを握り、一瞬の気の緩みで前の車に衝突しそうになった。
「今村執事、まず救急車を呼んで、それから場所を教えてください。すぐに向かいます」
電話越しに、今村執事の声が震えているのが分かった。すでに恐怖で正気を失っているようだった。藤田深志はそちらの状況がどうなっているのか想像することも、詳しく尋ねることもできなかった。ただ冷静に心を落ち着かせてこの事態に対処するしかなかった。
今村執事から送られてきた住所を確認すると、すぐに車を転回させて向かった。途中、何回も赤信号を無視したことだろう。
事故現場はすでに警察によって規制され、パトカーや救急車が次々と到着していた。
藤田深志は他のことは気にせず、直接現場に飛び込んで、数人の医療スタッフが祖父の救命処置をしているのを目にした。