第157章 やり直したくないなら別れよう

藤田深志が去った後、病室でまた家族会議が開かれた。

秋山奈緒は床の上を行ったり来たりする秋山泰成を見て頭が痛くなり、

「お父さん、何か考えて。もう歩き回るのはやめて。私まで目が回ってきちゃう」

秋山泰成は歩き続けながら、頭をフル回転させていた。藤田深志が本気を出したら、この事態は厄介なことになる。大魔王様の目の前で誤魔化すことなんて誰にできるだろうか?

ジョナランは傍らで慰めるように言った。

「奈緒、焦らないで。今の私たちの主な目的は、まず婚姻届を出すことよ。この保障を手に入れれば、たとえ藤田深志が何かに気付いても、息子のことを考えれば、あまり極端なことはしないはずよ。子供が無事に生まれれば、あなたたち二人の関係は日本刀でも切れないものになるわ」

ジョナランの一言で秋山泰成は目が覚めたように、両手を叩いて、

「そうだ。この数日の間に何とか婚姻届を出させれば、この件は成功したも同然だ!」

秋山奈緒は不満げに言った。

「お父さん、お母さん、何を考えているの?彼はまだ離婚もしていないのに、一週間以内にどうやって結婚できるの?たとえ離婚に同意したとしても、今は一ヶ月の熟考期間があるでしょう。間に合わないわ」

秋山泰成は両手を背中で組んで立ち止まり、

「今は彼に結婚登録に同意させる方法を考えよう。離婚の熟考期間なんてくだらない話だ。藤田深志がどんな人か知っているだろう?彼が望めば、役所は夜中でも開けてくれるさ」

秋山奈緒は少し安心した。そうだ、自分がなぜそこまで考えなかったのだろう。規則なんて一般人のためのものだ。藤田深志のような大物は何でも思いのままにできるはずだ。

「お父さん、でも鈴木之恵はまだ彼の戸籍に入っているわ!」

「気にするな、それは私が何とかする」

話している最中に、ドアをノックする音がした。藤田深志が手配した藤田家の小柳さんが看護師を連れてきた。

秋山泰成がドアを開けて二人を見た時、藤田深志が手配した人が来たことを理解した。

小柳さんは保温ポットを持っていて、中には昼食が入っていた。

「秋山さん、こんにちは。藤田家の料理係の小柳と申します。これからあなたの三食を担当させていただきます。健康のために外食は控えめにしましょう。食べたいものがありましたら、私に言ってください」