第156章 専門医に心臓の検査を手配する

秋山奈緒はこの角度からちょうど入り口が見え、藤田深志が長身で立っているのが目に入った。彼の眼差しは冷たかった。彼女は横目で秋山泰成を見て、とても気まずく感じた。

「お父さん、もういいから……」

秋山泰成はまだ秋山奈緒が藤田家の長男を身ごもったという喜びに浸っており、藤田深志が来ていることに全く気付いていなかった。

「なぜ言わせてくれないんだ。どこの家の財産だって息子に渡すものだろう。私には息子がいないから、もし息子がいたら、私も……」

ここまで話すと、部屋にいる数人の表情が一変した。

秋山泰成は自分が失言したことに気付き、本心を口にしてしまったことを悟った。

「奈緒、安心して藤田夫人をやりなさい。これからはビジネスで父さんを助けてくれないか、藤田深志に良い言葉をかけてくれ。父さんには何のバックグラウンドもない、起業は本当に大変だった。会社をここまで育てるのに、酒を何杯も飲んで、胃がもう穴が開きそうだ。」

秋山奈緒の表情が暗くなった。彼女はずっと秋山泰成が自分を一番可愛がってくれていると思っていた。何でも要求を聞いてくれていたのに、まさか家に男の子がいないからこそ自分にこんなに優しくしていたとは。もし男の子がいたら、この家で自分の居場所はなかったかもしれない。

彼の会社の株式なんて、一つも期待できないだろう。

秋山奈緒は入り口にいる藤田深志を見て、次の瞬間に秋山泰成がまた不適切な発言をするのを恐れ、急いで声を上げた。

「深志さん、早く来てくれたのね。」

彼女が電話を切ってからまだ十数分しか経っていないのに、もう入り口に立っているのを見た。

この時、彼女の胸の喜びは抑えきれなかった。秋山泰成の言う通り、男は口には出さなくても、心の中では息子が欲しいものなのだ。

彼はきっと彼女のお腹の中の男の子のことを知って、仕事を放り出して急いで駆けつけてくれたのだろう?

この重視してくれる態度に、彼女は自分の朝から晩まで続く妊娠悪阻も無駄ではなく、価値があったと感じた!

秋山泰成は藤田深志が入ってくるのを見て、老けた顔に少し困惑の色が浮かんだ。

この時、秋山奈緒はまた吐き気を感じ、起き上がったものの、トイレまで走る時間がなく、ジョナランは急いでゴミ箱を彼女の方に押し出し、彼女は先ほど食べたお菓子を全て吐き出した。