第155章 藤田グループの後継者

「おじいちゃん、そんな戯言を言わないで。夢で見ただけでしょう、どこで会えるはずがないわ」

彼女は慌てて涙を拭った。

おじいちゃんは慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、

「信じないかもしれないが、人は体が弱っているときには、あの世の人を見ることができるんだよ。私は本当に竹子に会ったんだ。彼女は私との友情を絶つと言っていた。

私と深志のおばあちゃんと君のおばあちゃんは同じ時期に下放された知識青年で、一緒に大学にも合格したんだ。その年、合格したのは私たち三人だけで、私は彼女たちより数点高かった。私たちは一緒に京都大学の金融学部を志願したんだ。数十年の付き合いだよ!」

おじいちゃんは話しながら涙を流し、

「私には才能がなく、子孫の教育もうまくできなかった。結局、彼女に負けてしまった。まあいい、彼女の方が優秀だったんだ」

鈴木之恵は声を詰まらせて泣いた。「おじいちゃん、そんな戯言を言わないで」

彼女はおじいちゃんの額に触れてみた。体温は正常だった。

おじいちゃんの目は彼女をはっきりと見つめていた。彼女が知らなかったのは、初日の夜に藤田深志とベッドの傍らで交わした会話を、おじいちゃんがすべて聞いていたことだった。彼らはおじいちゃんが昏睡状態だと思っていたが、実際は体が大きな試練を経て話す元気がなかっただけだった。

耳には何の問題もなく、ちゃんと聞こえていた。

若い二人は彼の病床の前で離婚の話をしていた。離婚協議書にも既にサインをし、離婚証明書の交換日も決めたと聞いた。そして、この老人には内緒にしておくつもりだと。

彼にはこの若い二人の問題に関わる元気はなく、彼らの感情が行き詰まっていることも分かっていた。

鈴木之恵のことは彼が一番よく知っていた。彼女はあの不埒な若者に対して一途な想いを持っていた。もし彼が許し難い悪事を働かなければ、二人はこんな状況にはならなかっただろう。

子孫の躾ができなかった自分が悪かった。

この件について老人は数日間心に秘めていたが、今は落ち着いて、理解できるようになっていた。

良くない結婚を続けても意味がない、苦痛を生むだけだ。早く終わらせて、新しい人生を始めた方がいい。