第154章 元夫

鈴木之恵はエレベーターに乗るまで、ずっと緊張していた息を漸く吐き出した。

確かに自分の要求は少し大きすぎたと感じていた。藤田ジュエリーの株式5%は決して小さな額ではない。当初この条件を提示したのは、一つは怒りに任せてのことで、もう一つは藤田深志が絶対に承諾しないだろうと思っていたからだ。

たとえ彼が与えるつもりでも値切り交渉くらいはするだろうと思っていたのに、まさか本当に5%の原始株を離婚の補償として彼女に譲渡するとは。

これで秋山奈緒が彼にとってどれほど重要な存在なのかがよく分かった。彼は奈緒のために自分の財産の4分の1を手放すことを厭わず、そんなにもあっさりと、一言の値切り交渉もなく。

鈴木之恵は彼の手から自分の手を引き抜き、エレベーターの鏡越しに後ろの人を見て尋ねた。