第173章 事故

事故を起こした車は、鈴木之恵が二日前に売った車だった。

彼女は車を売ってよかったと思った。さもなければ、今日事故に遭っていたのは彼女とお腹の赤ちゃんだったから。でも、車を売ったことで他人の家族に不幸をもたらしたことを後悔もしていた。

かつての鈴木美波の時と同じような交通事故。

警察の説明も同じで、ただの「ブレーキの故障」だった。

鈴木之恵はそんな偶然があるとは信じられなかった。

冷静になって最近起きた出来事を振り返ると、前回病院の駐車場でジョナランと秋山泰成に会った時、あの不倫カップルの目に宿っていた凶暴な光を思い出した。

この事件は彼らと無関係とは言えず、少なくとも鈴木之恵にとって彼らは第一容疑者だった。

彼女は再び感情を抑えきれなくなった。

秋山泰成は一体どんな夫であり、息子であり、父親なのか?

彼は愛人のジョナランと共謀して元妻を殺害した可能性が高く、実母と実の娘を見捨て、今では秋山奈緒の願いを叶えるために実の娘を殺そうとしている。

人はどれほど冷酷でなければ、ここまで徹底的なことができるのか?

鈴木之恵は呆然と地面に座り込んだまま、外出は不可能だった。今では彼女はあの悪意に満ちた二人が殺し屋を雇って彼女を始末しに来るのではないかと恐れていた。

しばらくしてようやく我に返った。法治社会では彼らをこんなに傲慢にさせてはいけない。今はジョナランと秋山泰成が殺人犯だという証拠はないが、必ず彼らを法の裁きにかける方法はある。

彼女は携帯を取り出して110番に電話をかけた。

「警察の方、私は昨日の高速道路での13台追突事故で、ブレーキが故障した車の元の所有者です。誰かがこの車に細工をしたのではないかと疑っています。確認をお願いします。亡くなった方々に真相を。」

一方、秋山奈緒は藤田深志の部下によって湖上町に連れて行かれ、専任の世話係が付いていた。彼女は完全に秋山泰成とジョナランに会えなくなり、電話でしか連絡が取れなかった。

テレビのニュースで見た。車から白い布を被せられた人が運び出されるのを見て、彼女は興奮を抑えられなかった。もうあの賤女が何か策を使って藤田深志を連れ去ることを心配する必要もないし、どうやって早く離婚させるかを考える必要もない。

藤田深志はついに彼女一人のものになり、藤田夫人の座も彼女にしかふさわしくない。