第179章 爪を隠した狐

警備室ではいびきが轟いていた。新人の警備員二人は熟睡中で、この夜に起きた出来事について何も知らなかった。

柏木正が何度かドアを叩いて、ようやく二人を起こすことができた。

「監視カメラを確認しろ」

藤田深志が命令した。

柏木正がパソコンを開き、該当する映像を探して開くと、ノイズだらけだった。

「藤田社長、監視カメラが壊されています。何も見えません」

藤田深志は細長い目を細めて、外に出て捜索に向かった。

今回は数人のボディーガードを連れてきており、柏木正は人々を率いて墓地を徹底的に捜索した。

藤田深志は入口に立ち、墓地の地形を観察しながら、人が隠れやすい場所を考え、二人の犯人が秋山奈緒をどこに連れて行ったのかを推測していた。

単なる誘拐なら、身代金要求の電話があるはずだが、彼の携帯電話は今も静かなままだった。