警備室ではいびきが轟いていた。新人の警備員二人は熟睡中で、この夜に起きた出来事について何も知らなかった。
柏木正が何度かドアを叩いて、ようやく二人を起こすことができた。
「監視カメラを確認しろ」
藤田深志が命令した。
柏木正がパソコンを開き、該当する映像を探して開くと、ノイズだらけだった。
「藤田社長、監視カメラが壊されています。何も見えません」
藤田深志は細長い目を細めて、外に出て捜索に向かった。
今回は数人のボディーガードを連れてきており、柏木正は人々を率いて墓地を徹底的に捜索した。
藤田深志は入口に立ち、墓地の地形を観察しながら、人が隠れやすい場所を考え、二人の犯人が秋山奈緒をどこに連れて行ったのかを推測していた。
単なる誘拐なら、身代金要求の電話があるはずだが、彼の携帯電話は今も静かなままだった。
これが最も恐れていることだった。相手が直接殺害して生還の機会を与えないなら、いくら多くの金を用意しても手遅れになる。
彼がそこに立って落ち着かない様子でいると、ポケットの携帯電話が振動し始めた。急いで取り出すと、柏木正からの電話だった。
「藤田社長、人が見つかりました」
藤田深志の心臓が一瞬締め付けられた。
「どこだ?」
彼は話しながら、柏木正たちがいた方向に向かって走り出し、小さな墓を越えて、遠くに数人の頭が見えた。
電話を切り、大股で近づいていった。
鈴木美波の墓の前で、ジョナランと秋山奈緒は共に気を失い、跪いたままの姿勢で倒れていた。彼女たちの体はすでに痺れていた。
藤田深志が近づいた時、柏木正は数人のボディーガードと共に彼女たちの縛り紐を解いていた。
「奈緒、目を覚ませ」
藤田深志はしゃがみ込んで秋山奈緒の顔に散らばった髪をかき分け、頬を数回叩いて呼びかけた。
秋山奈緒は物音に気付いて徐々に目を覚まし、最初の反応は身を縮めて逃げようとすることだったが、体が硬直して逃げられなかった。一晩中縛られていたため、全身が痺れていた。
「来ないで、来ないで、私を傷つけないで...」
秋山奈緒は恐怖に震え、泣きながら叫んだ。
彼女が声を出せることに、藤田深志は心が少し緩んだ。彼が想像していた最悪の事態に比べれば、結果は良かった。少なくとも命に別状はなかったが、何かに怯えているようだった。
「奈緒、私だ」