第185章 エビの殻むき

窓の向かい側で、鈴木由典は不機嫌な表情を浮かべていた。

「警備員に藤田深志を入れないように言っておいたはずだが、なぜ入れたんだ?」

アシスタントは申し訳なさそうな顔で、

「鈴木社長、あの狡猾な男がこのマンションの部屋を買って、オーナーになってしまったんです。警備員もオーナーを止めることはできませんでした。」

鈴木由典はタバコの吸い殻をゴミ箱に捨てながら、

「母娘はどうだ?」

アシスタント:「発狂しています。」

「私は数日間東京都に戻るが、お前はここで見張っていろ。お嬢様の安全に気をつけろ。」

「はい、鈴木社長。」

……

夕食時、藤田深志は栄養バランスの取れた食事を届けさせた。

鈴木之恵は最近一人で簡単な料理を作って済ませており、気分も落ち込んで食欲もなかったため、久しぶりにこんな豪華な食事を見た。

テーブルいっぱいに並んだ美味しそうな料理を見て、鈴木之恵は無駄が多いと感じた。二人ではこんなに食べきれない。

藤田深志は使い捨て手袋をして彼女のためにエビの殻を剥いた。彼が一つ剥くたびに彼女が一つ食べ、他の料理には箸をつけなかった。

彼は典型的な理系男子で、普段は人の世話など焼かない。この三年間はいつも彼女がエビの殻を剥いて彼が食べていたのに、今は立場が逆転していた。鈴木之恵は彼が目を伏せている様子を見つめ、陽の光が彼の顔に当たり、いつもより柔和な印象を受けた。

このような束の間の温かい時間は、この三年間では一度もなかった。鈴木之恵はしばらく見とれてしまった。

すぐに、藤田深志の前にはエビの殻の小山ができ、最後の一つを剥き終わって顔を上げると、ちょうど彼女の視線と合った。

「これしか食べないのか?」

鈴木之恵は黙り込んだ。彼が自分のためにエビを剥いている姿を見たかっただけだとは、絶対に言えなかった。

「もうお腹いっぱいです。」

彼女は手元の緑の野菜を箸で摘んで話題を変えた。

食事の後、藤田深志は服を着て外出する準備をし、出かける前に予定を告げた。

「病院に行ってくる。」

鈴木之恵は無表情で、心の中で思った。好きなところに行けばいい、私に構わないで。

彼女は夜に子供たちに授業があり、デザインの作品も完成させなければならなかった。数日間怠けていたので、作業を急がなければならなかった。