第186章 狂気

「藤田社長、人が来ました」

専門家は50歳を過ぎた女医で、簡単な挨拶を交わした後、一行はエレベーターに乗った。

柏木正が先頭に立って案内し、秋山奈緒の病室に近づくと、中から泣き叫ぶ声が聞こえてきた。

一同は足を止め、数秒間互いに顔を見合わせた。

藤田深志は大股で前に進み、ドアを押し開けた。秋山奈緒は目を覚まし、ベッドの上に座っていた。髪は乱れ放題で、両手で布団の端をきつく握り締め、目は虚ろだった。

ドアに人影が見えると、とても恐ろしそうな表情を浮かべ、

「来ないで、来ないで、あなたを害するつもりはないから、他の人を探して...」

ジョナランの時と同じような意味不明な言葉を口にした。

秋山泰成は涙を流しながら、

「私の娘よ、どうして一眠りしただけで母親と同じように正気を失ってしまったんだ。お父さんを怖がらせないでくれ!」