鈴木之恵は不動産屋が連れてきた女の子に授業を終えると、すぐに新作の準備に取り掛かり、忙しさのあまり時間を忘れて、そのまま机で寝てしまった。
藤田深志が帰ってきたとき、しばらくノックしても応答がなく、電話も通じなかった。
彼はドアの外で数分間待ち、ドアロックの暗証番号を試してみた。まず彼女の誕生日を入力したが、間違いだと表示された。次に自分の誕生日を入力してもダメで、結婚記念日に変えたとき、ドアロックがカチッと音を立てて開いた。
彼は柏木正を追い払い、長い脚で中に入るとまず靴を脱いだ。
リビングは静かで、寝室にも彼女の姿はなかった。
書斎の明かりがついていて、彼はゆっくりと近づき、書斎の入り口で立ち止まった。
鈴木之恵は机に伏せて、手に鉛筆を握ったまま。黒髪は頭の上でお団子にまとめられ、気持ちよさそうに眠っていた。