車は富裕層の住宅街を通り抜け、最も景色の良い場所にある綺麗な邸宅の前で停まった。藤田お爺さんは料金を支払いゆっくりと降車し、別荘のインターホンを押した。
別荘の中では、使用人たちが掃除を終え、主人が不在の一日の仕事も完了していた。
インターホンが鳴り、家政婦が出てきて、藤田お爺さんを見るとすぐにドアを開け、恭しく迎え入れた。
お爺さんは辺りを見回したが鈴木之恵の姿が見えず、直接尋ねた。
「若様のお嫁さんは?」
家政婦は正直に答えた。
「奥様は三日間お帰りになっていません。電話も通じず、藤田くんも連絡が取れないようで、私たちも何が起きたのか分からず、ただ待っているところです。」
家政婦がそう言うと、お爺さんの心配は更に募った。
杖をつきながら、震える足取りで三階に上がった。そこは若夫婦の寝室と子供部屋があった。