第204章 衆叛親離

柏木正は黙ったまま、書類カバンから離婚協議書を取り出して彼女に手渡した。

秋山奈緒はその大きな文字を見て、怒りで唇が震えた。

彼女が彼と結婚してまだ数日しか経っていないのに、もう離婚協議書が届いた。

あの短命な鈴木之恵でさえ3年は持ちこたえたのに、自分はたった3日の藤田夫人でしかないというの?

柏木正は穏やかな口調で付け加えた。

「藤田社長の資産は離婚前にすべて奥様に譲渡され、公証済みです。彼女はそれを使うことも、その存在すら知らなかったとはいえ、この財産はあなたとは一切関係ありません。彼は無一文で出ていくことになります。

あなたの言う夫婦共有財産については、藤田社長との結婚期間である3日間で分けることができます。藤田社長は奥様の為に働く身として、3日間も仕事を休んでおり、一銭も稼いでいません。」

秋山奈緒は深呼吸で気持ちを落ち着かせようとした。鈴木之恵というあの賤人は既に彼と離婚し、この世を去ったというのに、まだ彼の側近に「奥様」と呼ばれている。今の正式な妻である自分は一体何なのか?

彼女は離婚協議書を開き、一枚一枚目を通した。条項の一つ一つに彼女への憎しみが綴られていた。

【婚姻関係は女性の胎内の子供が生まれた時点で正式に終了する。】

【子供は女性が引き取り、男性は養育費を支払う。】

【子供は母親の姓を名乗り、藤田の姓を名乗ることはできない。】

【婚姻継続期間中、夫婦は面会の必要なし。男性に関するすべての事項は助手の柏木正が全権代理する。】

【女性は男性のいかなる家族とも無断で面会してはならない。】

……

後の内容を秋山奈緒はもう読む気になれなかった。信じられないことに、彼は彼女が産む子供さえも欲しがらず、子供に自分の姓を名乗らせることも拒否し、さらに彼女との面会も避けようとしている。その文面からは、彼女が産む子供にも会いたくないという意図が読み取れた。

これほどまでに情け容赦ないとは。

彼は彼女に対して極限まで嫌悪感を抱き、彼女に関するすべてのもの、彼女が産む子供までも嫌っているのだ。

彼女は涙を拭いながら、不満げに尋ねた。

「私が湖や海や建物から飛び降りて、死んでやると言ったらどうするの?」

柏木正は冷たく言った。