第203章 吐血

午前10時、藤田深志はカジュアルで控えめな服装に着替え、院長から渡された地図に従って非常口へと向かい、順調に進んでいった。

彼は携帯電話をサイレントモードにし、外部からの邪魔を遮断して、結果の良し悪しに関わらず彼女に付き添う決意を固めた。

静かな廊下を通り抜け、19階まで階段を上った。そこには彼女のいるICU病室があった。

階段を出てドアを押し開けると、まるで生死の門をくぐるかのようで、心臓が喉まで上がってきた。

意外なことに、ICU病室の外も人気のない恐ろしいほど静かだった。

彼は一歩一歩前に進み、床を踏むたびに足音が響いた。

この階にはICU病室が1室だけあり、特別室だった。一般の救急患者がここに来ることはない。彼女を守る人物の背景が相当深いことが窺える。

藤田深志は病室の前で足を止めた。病室のドアには小さなガラス窓があり、中を覗くことができた。中には様々な医療機器が揃っていたが、ベッドは空っぽで、床には離婚手続きの日に彼女が使っていたヘアピンが落ちていた。

ベッドは整然と整えられ、一切の雑物が残されていなかった。

藤田深志は頭から足まで冷え切り、喉に何かが詰まったような感覚で、心臓が痺れるほど痛んだ。

エレベーターの音が鳴り、掃除に来た清掃のおばさんがバケツを持って床を拭きに来た。彼女は、まるで生ける屍のように虚ろな目をして立っている彼を見た。

「お兄さん、ちょっと足をどけてくれる?」

藤田深志は空っぽのベッドを見つめたまま、足が根を生やしたかのように動かなかった。彼は必死に感情を抑えながら声を詰まらせて尋ねた。

「おばさん、この病室に入院していた人はどうなりましたか?」

おばさんは淡々とした口調で言った。

「亡くなられたんでしょう。昨日の夜まではいたんですよ。大勢のお医者さんがここで見守っていました。ここに入院する人で生きて出られる人は少ないんです。可哀想に、24歳の若い女性だったそうで、交通事故でした。」

藤田深志はおばさんの言葉を聞いて、全身の力が抜け、ドスンと地面に倒れ込んだ。彼は呟いた。

「そんなはずはない。彼女は私を待っているはず。こんな風に何も言わずに去るはずがない。」

おばさんはため息をついた。

「お兄さん、ご愁傷様です。あの方はあなたにとってどんな関係の人だったんですか?」