「私からの花、受け取りましたか?」
鈴木之恵は一瞬戸惑って尋ねた。
「どんな花ですか?」
陸田直木は微笑んで、
「カードを見ていないようですね。大丈夫です、私が直接お祝いを伝えに来ました」
鈴木之恵は落ち着きを保とうと努めた。
「陸田さん、お気遣いありがとうございます。でも、私たちはそれほど親しくありませんので、贈り物を受け取る理由がありません。お花はいくらでしたか?秘書に振り込ませます」
彼女の反応は陸田直木の予想通りだった。
陸田直木は少し黙った後、
「鈴木さん、ビジネスの話をさせていただきたいのですが、少しお時間をいただけますか?」
彼がそう言うと、機転の利く二人の助手は自然と姿を消し、ホールには二人だけが残された。
鈴木之恵は依然として表情を硬くしていた。彼女は京都府の誰とも関わりを持ちたくなかった。特に目の前のこの男性は藤田深志の同級生だった。