第220章 CBDへ

陸田直木は綺麗に包装されたかすみ草の花束を持って入り口に立ち、自分の頼りない妹を見て一瞬戸惑い、その後やや嫌そうな口調で尋ねた。

「なんでここにいるんだ?」

陸田詩子は、この役立たずの兄を頭からつま先まで見渡した。花を買ってくるなんて、母の誕生日にも一度も見たことがない。

「鈴木お姉さんと用事があって来たの。あなたに報告する必要なんてないでしょう?」

陸田直木は眉を上げ、二人の女性の間で視線を巡らせ、心の中で思った。きっとこの厚かましい奴が一方的に親しくなろうとしているんだろう。

「誰が君の鈴木お姉さんだ?勝手な思い込みはやめろ」

陸田詩子は鼻を鳴らし、小声でつぶやいた。

「あなたに能力がないから、私が鈴木お姉さんと呼ぶしかないじゃない」

陸田直木は目を見開いて警告し、陸田詩子は怖くなって口を閉じた。

鈴木之恵は自分の席に座って無表情のまま、兄妹を完全に空気のように扱っていた。

陸田直木は部屋に入り、かすみ草の花束を彼女のデスクに置いた。

「通りで見かけて綺麗だったから買ってきたんだ。この花は長持ちするって聞いたけど、アシスタントに生けてもらおうか?」

鈴木之恵はその花束を見て、どう見ても通りがかりで買ったようには見えなかった。陸田直木はここ数年、彼女の気持ちを考えて、進退を慎重に判断し、言葉を選んで隙のないようにしていた。もし花屋に注文したと言えば、きっと彼女は冷たい表情で次回から買わないでほしいと言うだろうと分かっていた。

この四年間、彼が贈ってきたものは、どれも心を込めて選んだものばかりだった。

「陸田直木!」

鈴木之恵は目を上げて彼を見つめ、かなり困ったような表情で、ソファに座っている彼の妹を一瞥してから率直に言った。

「私の所で時間を無駄にして何の意味があるの?」

陸田直木は真面目な表情になって、

「私にとっては楽しみなのかもしれないじゃないか。子非魚、安んぞ魚の楽しみを知らんや?」

鈴木之恵は言葉に詰まり、

「仕事があるから、出る時はドアを閉めてください」

このような客を追い払う言葉を陸田直木は何度も聞いていて、もう厚かましさも身についていた。普段なら更に居座ることもできたが、今は妹が傍らで見物していて、とても邪魔だった。

「じゃあ、まず詩子を連れて行くよ。週末一緒に食事でもどう?」