二人の子供は染川麻琴が忙しいのを見て、手を繋いでこっそりと部屋に入り、ドアを閉めた。
鈴木弘美は「お兄ちゃん、パパに会えた?」と尋ねた。
鈴木弘文は首を振った。
「もういいよ。パパはクズ男だから、私たちには必要ないの。ママに新しいもっといいパパを見つけてもらおう」
鈴木弘美は不思議そうに、
「パパは自分の好きなように選べるの?」
鈴木弘文は「もちろんだよ!」
鈴木弘美は嬉しそうに笑って、
「じゃあ、背が高くてかっこいいパパがいい。イチゴケーキが作れて、お話も上手で、遊園地にも連れて行ってくれる人がいい」
鈴木弘文は顎に手を当てて、
「一番大事なのは、ママを愛してくれることだよ」
二人の子供たちにとって「パパ」という言葉は全く馴染みがなく、理想のパパを探す計画を立てていた。
午後、鈴木由典は仕事を終えてホテルに戻り、まず染川麻琴に午前中の子供たちの様子を尋ね、何か悪さをしていないか確認した。
染川麻琴は鈴木弘文との約束通り、朝の出来事を叔父と母親に黙っていた。彼女はただ淡々と、
「朝、ケーキを買いに出かけただけで、特に何もありませんでした」と答えた。
鈴木由典はスーツを脱いでハンガーに掛け、靴を履き替えて部屋の中へ入った。
寝室では、鈴木弘美がクレヨンで絵を描いており、とても夢中になっていた。鈴木弘文はパソコンに集中して、小さな手がキーボードの上を飛び回っていた。
二人とも叔父が帰ってきたことに気付いていなかった。
「弘文、何をしているの?」
鈴木由典はこの甥のパソコンに特に興味があった。それは小さな子供の宝物で、三歳の誕生日に鈴木之恵からもらった誕生日プレゼントだった。後に改造され、誰にも触らせず、鈴木之恵さえも触れなくなっていた。
鈴木弘文は突然の声に驚いて、警戒するように叔父を見た。
パソコンの画面ではコードが高速で実行されており、やろうとしていたことがもうすぐ完了するところだった。最後の瞬間に問題が起きてはいけない。
彼はパソコンを隅に抱え、画面を鈴木由典に背けて、適当に、
「叔父さん、アニメを見てるだけだよ」と言った。
鈴木由典は額に手を当てた。画面には文字ばかりが並んでいて、アニメなど影も形もなかったのに。この子供は何をしているんだろう?