第222章 藤田社長、息子さんが来ました

「きれいなお姉さん、社長にお会いしたいのですが。」

受付嬢は、この子供の口調に驚いた。社長には誰でも会えるわけではなく、藤田社長に会うには少なくとも3日前に予約が必要だった。

彼女は周りを見回した。このかわいい小さな子供は一人でロビーにいて、周りには誰もいなかった。彼女は興味を持ち始めた。

「坊や、社長に何の用があるの？藤田社長はとても忙しいのよ～」

鈴木弘文は率直に言った。

「とても大事なことを聞きたいんです。」

彼は、なぜ自分のパパとママが一緒に住んでいないのか知りたかった。花子のパパとママは同じ家に住んでいて、いつも一緒に彼女を迎えに来る。

彼も、パパとママが一緒に自分と妹を幼稚園に送り迎えしてくれることを望んでいた。

彼の小さな頭の中には、パパがママと自分たち兄妹を望んでいないから、ママが彼らを連れて東京都で暮らしているのではないかという疑問があった。もしそうなら、そんなパパにはもう期待しないと思っていた。

受付嬢は棒付きキャンディーを取り出して渡しながら、

「坊や、パパとママとはぐれちゃったの？パパの電話番号を覚えてる？お姉さんが電話してあげるわ。」

鈴木弘文は口を尖らせ、心配そうな様子で、

「パパとはぐれたけど、大丈夫です。もう見つけましたから。今すぐ社長を呼んでください。とても大事なことを聞きたいんです。」

受付嬢は完全に呆然とした。彼女はここで3年働いているが、社長に息子がいるなんて聞いたことがなかった。

「あなた...藤田社長があなたのパパだって言うの？」

鈴木弘文はうんざりした。なぜ大人はこんなにくどいのか。彼が延々と説明したのに、このお姉さんがやっと理解したなんて、大人って本当にバカだ。

「お姉さん、正解です。だから今すぐ呼んでくれませんか？」

受付嬢は一瞬躊躇した。彼女が読んだことのある傲慢な社長の小説を思い出し、社長に息子がいるとは聞いたことはなかったが、社長に隠し子がいるのはよくあることだと思った。そして、今目の前にいるかわいい男の子の眉間の凛々しさは、確かに藤田社長に似ているように見えた。

彼女は決めかねて柏木秘書に電話をかけた。

「柏木秘書、受付に藤田社長の息子だという男の子が来ているのですが、迎えに来ていただけませんか？」