第228章 東京都へ、彼女を探しに

その時、鈴木弘文と鈴木弘美はすでに甘い夢の中にいた。

鈴木由典はリビングのベランダで鈴木之恵に電話をかけていた。

「之恵、二人の子供たちはもう寝ているよ。明日は水族館と博物館に連れて行く予定で、明後日には帰るつもりだ。」

二人の子供が叔父と京都府に行っているため、鈴木之恵はここ数日よく眠れず、悪夢を見続けていた。

「お兄さん、会ってはいけない人には会わなかった?」

鈴木由典は一瞬黙り込んだ。

「会ったけど、子供たちとは互いに気付かなかったはずだ。特に注意していたから、心配しなくていい。」

鈴木之恵はその言葉を聞いて、胸が締め付けられるような思いがした。まさか京都府で会うなんて、あんな大きな都市で、何百万人もの人口がいるのに、出会う確率は低いはずなのに。

「お兄さん、弘文のことは必ず気をつけてね。あの子はいたずら好きだから。」

鈴木弘文のことを言われて、鈴木由典も少し頭を悩ませた。この子が何か隠していると薄々感じていて、いつも部屋に閉じこもって一人で怪しげに遊んでいるのだ。

「分かった。早く休みなさい。」

鈴木之恵は電話を切ると、何度もくしゃみをした。彼女が知らないところで、藤田深志はFを見つけられず、有効な信号も消えたため、郊外の墓地に向かっていた。

鈴木美波の墓の隣には、鈴木之恵の衣冠塚があった。

藤田深志は途中で二束の花を買い、二つの墓の前にそれぞれ一束ずつ置いた。

真夜中だというのに、彼は怖さを感じることもなく、墓石に向かって独り言を言っていた。

「之恵、あの老いぼれはお前が東京都にいると言っていたが、本当に東京都にいるのか?俺が会いに行ってもいいか?」

墓地は恐ろしいほど静かで、彼の話し声と柏木正と数人のボディーガードの呼吸音だけが聞こえていた。

彼はしゃがんで鈴木之恵の墓にある写真を丁寧に拭き、義理の母の墓の前で何度か頭を下げてから立ち上がって帰り支度をした。

柏木正と数人のボディーガードもすぐに後を追った。

車で市内に戻ると、彼はボディーガードたちを解散させ、柏木正だけを残した。

「明日の航空券を予約してくれ。東京都に飛ぶ。」

運転中の柏木正は表情を固くした。

「社長、明日の午前中は重要な会議があり、午後は新潤の柏木社長とゴルフの約束が…」