中村慎は電話の向こうで感謝の意を示し、藤田深志というジュエリー業界の大物が先陣を切ってくれるなら、これ以上のことはないと思った。
「それは本当に素晴らしいですね、藤田さん。約束します。この件を解決してくれたら、兄弟の私は寝ずに十日十夜でも頑張って、あのFを見つけ出してみせます」
そのFの話題が出ると、藤田深志は頭が痛くなった。今日、彼は携帯を新しく変え、元の端末から必要なデータを保存し、ローカルのデータを削除した。
もしFを捕まえることができ、心配の種を解決できれば、中村慎にどう感謝すればいいのかわからないほどだった。
二人はこうして、お互いの目前の問題を解決することを約束した。
藤田深志はボディーガードを数人雇い、暗闇に潜むFからの襲撃に備えて、警戒を怠らなかった。
東京都に来て二日間、何の成果も得られなかった。
自信満々に鈴木之恵の墓地を探しに来たが、何も見つからなかった。柏木正もこの件で頭を悩ませていた。
彼は柏木正から新芽工房の住所と連絡先を聞き、タクシーを拾って直接向かった。
ホテルから新芽工房までは少し距離があり、車窓の街並みを眺めながら、彼女はいったいどこにいるのかと考えていた。
なぜこの世界から完全に消えてしまったのか、墓前で供養する機会さえ与えてくれないのか。
車が目的地に着いても、彼はまだ考え込んでいた。運転手に声をかけられてようやく車を降りた。
この場所には四年前に一度来たことがある。前回は建物に入らなかった。
柏木正から送られてきた情報を確認し、13階のA01を目指して上がっていった。
13-A01のガラスドアの外に立ち、中の窓際に掛かる風鈴を見て、藤田深志は一瞬凍りついた。彼女を思い過ぎて狂ってしまったのか、一瞬、窓際に立つ鈴木之恵の後ろ姿が見えたような気がした。
彼女が去ってからの四年間、彼女はいなくなったはずなのに、どこにでもいるような気がした。周りのあらゆるものが鈴木之恵を思い出させ、彼女に関連するものばかりだった。
彼女は風鈴が好きで、いつも材料を買って帰り、自分で作って窓辺に吊るし、風が吹くとチリンチリンと鳴らしていた。
我に返った彼は苦笑いを浮かべた。昨夜の不眠が幻覚を見せているのだろう。
藤田深志がインターホンを押すと、しばらくして若い女性が出てきてドアを開けた。