第240章 今度は、彼が愛を注ぐ番

「様子を見ていろよ。手加減はしないからな」

陸田直木は一言残して立ち去った。女性の心を掴むのは口が上手いだけではない。鈴木之恵のような恋愛で傷ついた女性は、簡単には愛を信じない。

彼女に時間を与える必要があると感じた。少しずつ安心感を築いていけば、いつか彼女の心の中で一定の位置を占められるはずだ。

藤田深志は強い日差しの下に長時間立ち尽くしていた。かつて経験したことのない危機感に戸惑いを感じていた。それは象牙の塔で育った彼のような人間が一度も味わったことのない感覚だった。

彼の周りには多くの女性がいた。この四年間、周囲の人々は彼に女性を紹介し続けた。スーパーモデルもいれば、芸能人も、そして名家の令嬢もいた。しかし彼の心の中では、運命の人以外の女性は全て第三の性として扱われていた。