柏木正はアイドルを追っかけることはなかったが、婚約者がアイドルのファンだった。
彼も婚約者を通じてこの半年で人気が出た女優を知ることになった。清純派のイメージで多くのファンを魅了していた。
今の状況は、目に痛いほど酷いものだった。
染川結は藤田深志の怒鳴り声に怯え、前に進めなくなり、裸足で床に立ち、退屈そうに足の指で床をいじっていた。
柏木正はソファーに行き、藤田深志が外したネクタイを取り、彼の後について外に出た。二人がエレベーターを出たところで、藤田深志は胃の中が激しくかき回され、夕食で食べたものを全て吐き出した。
藤田深志は本来、付き合い酒をする必要はなかった。結局のところ、他人が彼にへつらっているだけだった。今日は気分が優れず、鈴木之恵のところで冷遇され、鈴木之恵の冷たい言葉を思い出し、そして彼が陸田直木と楽しく話している様子を見て、言い表せないほどの苦々しさを感じ、自制が効かず、何杯も飲んでしまった。