鈴木之恵とのあの事故は彼の心の結び目となり、何度も真夜中に汗びっしょりで目を覚まし、祖父の前で家法を受けている自分や、鈴木之恵の墓前で懺悔している光景が脳裏に浮かんでいた。
秋山奈緒のところで酒を飲んでしまい、あってはならない過ちを犯してしまったことを、彼は心から後悔していた。それ以来、女性がいる席では決して酒を飲まないようにしていた。
今、この男の口から、それらはすべて秋山奈緒が作り上げた嘘で、秋山奈緒の罠だったと聞かされた。
彼は最初から最後までその狂った女に触れていなかった。彼は潔白で、汚れていなかったのだ。
藤田深志の心には何とも言えない安堵感が広がり、自分の身に背負った罪が一つ減ったように感じた。
男は藤田深志の表情を見て、怒りの色が一切なく、むしろ自分が寝取られたことに全く関心を示さないことから、やはり普通の男ではないと思った。