第264章 藤田グループとコラボしよう

藤田深志は使い捨て手袋をはめて海老の殻を剥き始めた。しばらくすると、一皿の半分ほどが鈴木之恵の皿に移っていた。

従業員たちは食事をしながら、時折この三人のテーブルに視線を送っていた。

周囲の視線を感じながら、藤田深志は更に熱心に海老の殻を剥き始めた。まるで、この海老を之恵のために剥いていることを、誰にも知られたくないかのように。

彼の最近の行動は、明らかに全ての人に彼が彼女を追いかけていることを示していた!

藤田深志はジュエリー業界の伝説的な人物で、若いデザイナーたちは普段彼に接する機会がなく、非常に興味を持っていた。

今回、大物が女神を追いかける様子を目の当たりにして、皆が機会があれば此方を覗き見たがった。このカップルは既に彼らの心の中で確定的なものとなっていた。

鈴木之恵が知らないことに、彼女が自ら雇った従業員たちは既にグループチャットで大盛り上がりしていた。

【私の目がおかしいのかしら?ピンク色の泡が見えた気がする。この大物が私たちの芽さんを追いかけているわ!】

【うぅ、社長が剥いた海老はきっと美味しいはず。芽さん、早く彼を受け入れて!そうすればカルマジュエリーと藤田ジュエリーのコラボ商品も出せるし、私たちもデザイン界で注目されるわ。】

【信じられない!私の友達が藤田グループで働いているんだけど、あるモデルが社長を誘惑しようとして色仕掛けをしたんですって。結果どうなったと思う?社長は直接そのモデルの所属事務所に連絡して、あるプラットフォームの試着ライブ配信の仕事を押し付けたんですって。】

【まじか、社長は女性に厳しいのね!でも大丈夫、私たちの芽さんに優しければそれでいいわ。】

……

鈴木之恵の食欲は良好で、テーブルの料理は全て彼女の好みのものだった。ただ、食べれば食べるほど疑問が湧いてきた。南国レストランは本場の料理のはずなのに、なぜテーブルに並んでいるのは全て京都府風の味付けなのだろう?

彼女は幼い頃から京都府で育ち、東京都に来てからの4年間、実はこちらの味付けにはかなり馴染めなかった。南北の違いは大きく、すぐには慣れられなかった。

藤田深志との3年間の結婚生活で、彼女の味覚は贅沢になっていた。実家の祖母が特別に京都府から呼び寄せた料理人の腕前以外、外食では胃に合う料理にめったに出会えず、仕事中は大抵適当に済ませていた。