第265章 汚れた男

藤田深志は車の中に座り、携帯を握りながら思いに耽っていた。

過去のことを思い返すと、この世に生まれてきた意味すらないように感じ、まさに藤田家の遺伝子を侮辱しているようなものだった。

手元にある録音を鈴木之恵に聞かせたかったが、午前中ずっと陸田直木のあの悪党の妹に監視されていて、機会が見つからなかった。

柏木正は運転に集中しながら、

「社長、パソコンは奥様のところに置いたままで、京都府に戻ったら新しいのを買わないといけませんね。重要な書類は奥様に送ってもらうことになります。会社の重要資料は…」

藤田深志は重要資料という言葉で我に返り、

「彼女のところに置いておいて大丈夫だ。後で私から話をする。」

「社長、奥様のプライベート番号を聞き出しました。もうお使いの携帯に送っておきました。」