第266章 彼のパソコン

藤田深志は今すぐにその録音を彼女に送りたかったが、友達追加する機会すら与えられなかった。

二人は搭乗し、自分の座席を見つけた。藤田深志は冷たい表情で一言も発せず、その威圧感は通り過ぎる雲までも凍らせそうだった。

柏木正は目の端で彼を盗み見た。社長は目を閉じて座席に寄りかかっていたが、眠っているわけではなく、ただ心が痛くて話したくないのだと分かっていた。

「汚れた男」という言葉は奥様だけが彼に向かって言える言葉で、他の誰かが言えば、とっくに懲らしめられていただろう。

今、彼は自分の携帯の電池が切れて電源が落ちてしまえばいいのにと思っていた。あのメッセージは携帯の中で時限爆弾のようなもので、いつ彼のボーナスを吹き飛ばすか分からなかった。

柏木正はそうやって気が気でない状態で旅を終えた。