秋山奈緒は血の気が引くほど驚いた。彼の残虐さを既に経験していた彼女は、薬を飲まされたその瞬間から、夜逃げをして彼の前に姿を現すことも、京都府の土地を踏むことさえも恐れていた。
鈴木之恵とお腹の中の二人の子供が死んだことを知っている以上、彼が自分を許すはずがないと分かっていた。
実の母が殺されたと知った時でさえ京都府に入る勇気がなかったが、今回は状況に迫られての帰京だった。父の残した会社の処理が必要だったのだ。
それは両親の一生の心血であり、会社が他人に分割されるのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。それは彼女の財産なのだから。
しかし、こんなにも運が悪いとは思わなかった。藤田深志が出張で京都府にいないことを確認したのに、京都府に入って三日目で彼に玄関先で待ち伏せされてしまった。