彼は長い間実家に帰っていなかった。
鈴木之恵が去った後、祖父は彼と対立し、鈴木之恵を連れ戻さない限り実家の門をくぐらせないと宣言した。
そう言いながらも、結局は実の孫のことだ。老人は最初の2年だけ彼を家に入れなかったが、後に彼が苦労している様子や、無限の後悔の中で生活し、人とも幽霊ともつかない状態で自分を追い込んでいることを知り、老人は彼のことを心配していた。
正月や祝日には、家族団らんの食事に参加することを許すようになった。
食事以外では、老人は彼と関わりたがらなかった。その後、誰かが鈴木之恵の死の知らせを老人に伝え、老人は大病を患い、九死に一生を得た。
それ以来、老人は完全にこの長孫を無視するようになった。
藤田深志は自分の罪の重さを知っており、祖父の許しを求める資格はないと思っていたが、それでも毎週末帰省して様子を見に来ていた。泊まることはせず、使用人から老人の最近の食欲や好みを聞き出し、好物を買って届けるだけで、自ら老人に話しかけて怒らせることは避けていた。
今、100年分の衝撃を受けるような嬉しい出来事である鈴木之恵の発見を、まだ祖父と共有できていなかった。老人がこれを知れば必ず喜び、体調も徐々に良くなるはずだった。
柏木正が車を実家の中庭に停めた時、この時間帯、祖父はすでに就寝していた。
彼は足音を忍ばせて入ると、叔父が眼鏡をかけてホールで電話をしていた。藤田深志が入ってくるのに気付くと、相手に適当に言葉を返して電話を切った。
藤田深志は叔父が相手に言っていた言葉を漠然と聞き取り、嘲笑して気にも留めなかった。
叔父は彼が精神的に不安定だった2年間に、会社の株主たちを多く味方につけ、相当な株式を握っていた上、立ち上げた高級ドレスの事業ラインも発展し、侮れない対抗勢力となっていた。
しかし藤田深志はそれらを全く気にしていなかった。彼が握っているものは、彼が自ら手放さない限り、誰にも奪われることはなかった。
藤田深志は叔父の方を見て、皮肉っぽく言った。
「叔父さんは本当に忙しいですね。こんな遅くまで会社のために尽くしているなんて。」
藤田晋司は口を押さえて咳をし、
「深志が帰ってきたのか?お前の母さんがまた家柄の良い令嬢を何人か見つけてきたらしいぞ。この機会に会ってみるといい。男は正式な嫁を迎えるべきだからな。」