第270章 ママを守る

こちらで話をしている間に、藤田晋司が部屋から出てきて、熱いお茶を持ってきた。

「お父さん、今日はご機嫌がいいようですね。深志が新しい彼女を見つけたからですか?今度家に連れてきて、みんなに会わせて、早く日取りを決めましょう」

彼の言葉は善意に聞こえたが、その中には隠された刃が潜んでいた。

誰もが知っていた。老人がこの長男の私生活をどれほど気にかけているか。孫嫁と二人の曾孫を失った後、老人は藤田深志に新しい恋人ができたなどという話を聞くのを嫌がっていた。

陶山蓮華が藤田深志に女性を紹介するのも、老人に内緒で密かに行っていたほどだ。藤田晋司が先ほど言ったような言葉を普段なら、老人は必ず怒り出し、藤田深志に家法を言い渡すところだった。

しかし今日は彼の思惑が外れた。老人は怒るどころか、むしろ顔のしわがより深くなるほど笑みを浮かべた。