第270章 ママを守る

こちらで話をしている間に、藤田晋司が部屋から出てきて、熱いお茶を持ってきた。

「お父さん、今日はご機嫌がいいようですね。深志が新しい彼女を見つけたからですか?今度家に連れてきて、みんなに会わせて、早く日取りを決めましょう」

彼の言葉は善意に聞こえたが、その中には隠された刃が潜んでいた。

誰もが知っていた。老人がこの長男の私生活をどれほど気にかけているか。孫嫁と二人の曾孫を失った後、老人は藤田深志に新しい恋人ができたなどという話を聞くのを嫌がっていた。

陶山蓮華が藤田深志に女性を紹介するのも、老人に内緒で密かに行っていたほどだ。藤田晋司が先ほど言ったような言葉を普段なら、老人は必ず怒り出し、藤田深志に家法を言い渡すところだった。

しかし今日は彼の思惑が外れた。老人は怒るどころか、むしろ顔のしわがより深くなるほど笑みを浮かべた。

「晋司の言う通りだ。深志は嫁を見つけた。之恵だよ、彼女は無事で元気に生きているんだ!」

老人は興奮した様子で、この知らせを家族全員に伝えたいという気持ちが溢れていた。

藤田晋司は一瞬驚いた表情を見せ、目の奥には無視できない喜びが浮かんでいた。

「之恵が見つかったんですか?」

老人は頷いた。

「ああ、之恵は無事だ。別の都市で暮らしていて、今はとても元気にしているよ!」

藤田晋司は何かを思い出したように一瞬ぼんやりとし、しばらく間を置いてから尋ねた。

「之恵はどの都市にいるんですか?」

老人は顎で藤田深志を指し示した。

「深志に聞きなさい。彼が見つけたんだから」

質問が藤田深志に向けられたが、叔父のこの一見気遣いに見える質問に、彼は答えたくなかった。鈴木之恵に関することすべてが叔父と関係を持つと、彼の心は非常に不快になった。自分の大切な人が他人に気にかけられているような感覚だった。

藤田深志は唇の端をかすかに上げ、笑みは目に届かなかった。

「おじいさん、まずは食事にしましょう。私はやっと之恵を見つけたばかりで、彼女もまだ気持ちの整理ができていません。あまり邪魔をするわけにはいきません。それに今は仕事も忙しいようです」

藤田晋司の期待に満ちた眼差しは徐々に沈んでいった。

家族全員が食堂に座り、全員が揃うと、老人はすぐにこの良い知らせを発表した。