第307章 これからお酒を飲まないで

藤田深志は眉をひそめ、

「彼女がそんなひどいことを言ったのか?」

「信じないなら、何も言わなかったことにして。あなたのお母さんだから、私より彼女を信じるのは分かるわ」

鈴木之恵は彼が自分の味方をしてくれないことにもう慣れていた。今は離婚したのだから、文句を言う必要もない。彼女の心の中では、もう何も価値がなかった。

藤田深志は口角を引きつらせながら言った。

「之恵、僕は君を信じているよ。どうして信じないことがあるんだ。藤田家の門をどちら側に開くかは、僕が決める。誰を入れるかは他人が決めることじゃない。母と晴香が嫌いなら、付き合わなくていい。僕は君に何も強制しない。君は僕と一緒に暮らすんだ、彼女たちじゃない」

鈴木之恵は鋭い目つきで尋ねた。

「誰があなたと一緒に暮らすって?」

このクソ男、いい夢見てんじゃないの!

鈴木之恵はきっぱりと拒否し、藤田深志は暗い表情を浮かべた。

「之恵、君以外の女性は僕の目には第三の性別としか映らない。店のグラスファイバーマネキンを見るのと同じだよ。僕の気持ちが分かるかい?」

彼は焦って説明し、鈴木之恵が信じてくれないのではないか、誤解されるのではないかと心配した。

「之恵、清水優紀は父の友人の娘なんだ。今日は彼らが一緒に計画して僕を騙したんだ。彼女のエスコート役になるとは知らなかった。知っていたら、村上拓哉のエスコート役になってもこんな場には来なかったよ」

鈴木之恵は彼の言葉に驚いた。なぜ突然村上拓哉の話が出てくるのか。

「あなたと村上拓哉の間に何かあるの?」

彼女は軽く尋ねた。純粋な好奇心からだったが、藤田深志を焦らせてしまった。

「之恵、僕の性的指向は分かっているだろう?僕と拓哉は子供の頃からの知り合いで、彼の父と祖父が仲が良かったから一緒に遊ぶようになっただけだ。もし本当に彼に気があったら、今まで待っていたと思うか?」

彼は真面目な表情で村上拓哉との関係の潔白を説明した。鈴木之恵は数年前のある出来事を思い出した。彼と村上拓哉が酔って同じ部屋で一晩過ごしたことがあった。

その時は村上拓哉の性的指向を知らなかったので深く考えなかったが、今思い返すと恐ろしい。

「あなた、村上拓哉と寝たことあるでしょ!」

藤田深志は足を踏み外しそうになり、彼女の足を踏みそうになった。冤罪だ!