鈴木之恵は黙って尋ねた。
「なぜ私に教えてくれなかったの?」
藤田深志は不満げに言った。
「あの時、君に言おうと思ったんだけど、グローブボックスを開けた途端に態度が変わって、何を怒っているのか分からなかった。それ以来、私の助手席には二度と座らないと言って、他の女に譲るって言ったじゃないか」
この件について鈴木之恵は覚えていた。あの時、彼の車で実家に帰る途中、ティッシュを取ろうとしてグローブボックスを開けたら、中は女性用品でいっぱいだった。
それらは彼女が置いたものではなかった。となると秋山奈緒が置いたものに違いない。あの偽善者以外に誰が藤田深志の車に乗れるというの?
彼女はその場で不機嫌になって降りようとしたが、彼が許さず、二人は不愉快な雰囲気のまま実家に戻った。
鈴木之恵は唇を噛んで言った。
「じゃあ説明してよ、グローブボックスの生理用品は何なの?まさか大の男が生理用品を使うわけないでしょう?」
藤田深志は呆れて笑った。
「こんなに感謝されないで誤解されるなら、会社の社員に福利厚生として配った方がましだったよ。前に私の車で急に生理になって、ティッシュがないって文句を言ったの忘れたの?」
鈴木之恵は言葉に詰まった。これは彼の嘘ではなく、確かにそういうことがあった。あの時、突然生理が来て、彼の車には緊急用のティッシュすらなく、彼女は散々文句を言った。
「じゃあ、生理用品は私のために用意してくれたの?」
藤田深志は怒って言った。
「そうでなきゃ誰のために用意すると思うんだ?」
「秋山奈緒のためかと思った!」
藤田深志は運転中でなければ、本当に彼女の額をはじきたかった。
「彼女の生理なんて私に関係ない。なんで私が彼女のために買う必要があるんだ?」
「彼女はあなたの初恋の人じゃないの?生理用品を買うくらい、男の好意ってそんなに安っぽいの?」
藤田深志は胸が詰まった。初めて彼女がこんなに言葉鋭く、次々と彼を攻撃してくるのを感じた。彼は苦笑いしながら、もし以前彼女がこんなに直接的に言い返して、話をはっきりさせていれば、二人の間にこんなに多くの誤解はなかったかもしれないと思った。