咳払いの音で鈴木之恵は自分の考えを確信した。
彼女は落ち着きを取り戻した。左右からも人が来ていた。この場所に不慣れで、階段の場所もわからず、逃げるのは難しかった。
来たからには、受け入れるしかない。
「叔父さん、9号の患者があなただったの?」
鈴木之恵は手に持っていた水のボトルを堂々とテーブルの上に置いた。
「この水をあなたに渡して、私の任務は完了です。新しい手がかりを取りに下に行かなきゃ」
藤田晋司は既に振り向いていて、月明かりを背にしていたため、鈴木之恵には彼の表情が見えなかった。
「之恵、相談したいことがあるから、急いで帰らないで」
鈴木之恵は携帯を握りしめ、いつでも電話できるように準備しながら、藤田晋司が一歩一歩近づいてくるのを見つめていた。近づけば近づくほど、彼女の心臓の鼓動は激しくなった。