第319章 私に似ている

動画はすぐに終わった。

藤田深志は動画を閉じてメッセージを更新したが、後ろに何も新しいものが見つからず、がっかりした。

「なんで終わりなの?一つしか撮ってないの?」

柏木正は申し訳なさそうに言った。

「社長、これは盗撮なんです。奥様には内緒にしてください。知られたら怒られちゃいます。」

藤田深志は眉を上げて不満げに言った。

「たった十数秒で、横顔だけ。正面顔が一枚も撮れてない!」

柏木正は心の中で思った。知っていれば撮らなかった。奥様に叱られるリスクを冒して坊ちゃんの動画を撮って見せたのに、今度は社長に叱られる。何のためだろう?

「社長、焦らないでください。息子さんは自分の子供なんですから、逃げることはないでしょう?何度か来れば、坊ちゃんに会えます。奥様の怒りが収まれば、四人家族で再会できますよ。」

藤田深志の眉間が少し緩んだ。これはまだ聞ける話だ。

彼は再び先ほどの短い動画を開いて繰り返し見た。動画の中で、鈴木弘文はリビングで2メートル近い高さのロボットをいじっており、表情は真剣だった。

柏木正は子供の横顔しか撮れなかったが、彼は一時停止して注意深く観察し、自分では気づかないうちに口角が後頭部まで上がりそうになっていた。

「私の息子の耳は私に似てるだろう?」

柏木正は前の席に座りながら口をとがらせたくなった。こんな不鮮明な動画で誰の耳に似ているなんてわかるはずがない。みんな同じような耳をしているじゃないか。まさか千里耳でもあるまいに。

柏木正は心の中でそう思ったが、口に出す勇気はなかった。

「社長、坊ちゃんはあなたにそっくりです。」

藤田深志は柏木正の言葉の中の適当さに全く気付かなかった。

「髪も私に似てる。眉も、首も、手も私に似てる。」

柏木正は密かに目を回した。髪は黒いから、似てると言えば間違いではない。眉に関しては動画にはっきり映っていないじゃないか。首なんてどうやって関連付けるんだ。みんな同じような首をしているんじゃないのか?

「社長、坊ちゃんは本当にあなたにそっくりです。右手の五本の指なんて、まるで同じですよ。」

藤田深志は顔を上げて一瞥した。今日はなぜか彼の小さな助手が皮肉っぽく感じられた。彼は軽蔑的に笑った。この助手は間違いなく嫉妬病にかかっているな。