第320章 やはり秋山若様は面が広い

短い時間の間に、鈴木弘文は心の中でたくさんのことを考えていた。

彼は、あのクズ父が母に近づくことを心配していた。妻も子供も捨てた男が、いい人のはずがない!

「ママ、僕に...お父さんを見つけてくれるの?」

鈴木之恵は息を飲んだ。

「弘文、お父さんが欲しくないの?」

鈴木弘文は少し悲しくなった。もちろん父親が欲しい、夢の中でも他の子供たちが父親を持っているのを羨ましく思っていた。でも、クズ父は嫌だ!

「ママ、悪いお父さんは嫌だよ。」

鈴木之恵は笑って言った。

「お父さんは悪い人じゃないわ。もしお父さんが魔法学園から帰ってきたら、好きになれる?」

鈴木弘文は口を尖らせた。

「様子を見てからかな!」

鈴木之恵は心の中でため息をついた。この息子は簡単には騙されない、あの嫌な男は大変だろうな。

あっという間に秋山奈緒が決めた忘年会の日が来た。

鈴木之恵は一昨日、小川淳と会って細かい点について話し合った。会社を取り戻す時期を今日に設定したのは、秋山奈緒により強烈な打撃を与えるためだった。

必要な全ての資料は、小川淳の方で準備が整っていた。

夜8時、忘年会は恒福ホテルで予定通り開催された。

秋山奈緒は今回、かなり豪華に準備をした。ホテル全体を貸し切り、入り口には警備員まで配置した。

入場する従業員全員が、男性はスーツ、女性はドレスを着用。内部は極めて贅沢で、五つ星ホテル、七つ星レベルの料理、輸入キャビア、アワビは食べ放題、ワインも一万円以上のクラスのものばかり。

まるで秋山泰成が残した財産を使い果たそうとしているかのようだった。

彼女はここ数年落ち込んでいたが、ようやくチャンスを掴み、秋山泰成の財産を手に入れ会社の大権を握ったのだから、盛大に祝うに決まっている。街中の名士を全員招待したいくらいで、世界中に宣言したかった。彼女が父の会社を継承し、秋山実業のCEOになったことを。

秋山奈緒という人物は虚栄心が強く、見栄っ張りで、こういった面子にこだわる。

学生時代、賞を取るたびにSNSに自慢げに投稿していた。鈴木之恵はその時若かったので、秋山奈緒の本性が分からなかった。後で調べてみると、なんと、クラスのほとんど全員が受賞していた参加賞だったのだ。