第325章 彼女は可哀想

島崎勝人は顔を強張らせ、すぐに作り笑いを取り戻した。小川淳が少し手腕を持っていることは知っていたが、こいつがこんなに無遠慮に不良品を買い取ると直接提案してくるとは思わなかった!

確かに、彼が先に大口を叩いたが、誰が物を買うのに直接不良品を買うだろうか?この行為は彼のポケットから直接金を取り出すようなものだ。

彼は我慢して言った、

「サインします、サインします。年次総会が終わったら契約書にサインします。」

マーケティング部長は呆然としていた。先月、宝威株式会社の前で一日中待っていたのに、島崎勝人は彼に会わなかった。その理由さえも適当なものだった。

夜になってようやく待ち伏せできたが、その老いぼれは酒を飲んで胃が痛くて商談できないと言い、話をする機会さえ与えなかった。

今や新しく来た小川社長と鈴木社長に対して、頭を下げてペコペコする姿はまるで犬のようだ。自ら商売を持ちかけ、廃品まで引き取ろうとしている。倉庫に山積みになった廃鉄で、しばらくは廃品業者として大儲けできそうだ。

島崎勝人は話を終えると、額の汗を拭いながら隅に行って電話をかけた、

「藤田社長、本当にこうするんですか?兄弟を騙さないでください。私は一生かけて築いたこの財産しかないんです。こんな浪費には耐えられません。」

藤田深志は電話を受けた時、すでに恒福ホテルの下にいた、

「あなたが使った金額は私が補填します。今後は鈴木さんの注文は全て受けてください!たとえゴミでも、引き取ってください!」

島崎勝人はこの安心の種を飲み込み、顔のしわまで緩んだ。この方が補填してくれるなら問題ない、

「藤田社長、承知しました!」

——

みんなが騒動を見終わり、年次総会は通常通り進行した。

鈴木之恵は赤ワインを手に取り、群衆の中で八木修二の姿を探していた。彼女が外にいる時、八木修二はまだビデオ通話で中継していたのに、中に入ってからは姿が見えなくなった。

その時、八木修二と村上拓哉の二人は隅で不機嫌そうに座っていた。

二人はお互いを無視し、先ほど鈴木之恵が白蓮花のような女を打ち負かした時も、二人は感想を共有することを我慢していた。

鈴木之恵がようやく隅で二人を見つけた時、この二人は背中合わせで各々自分のスマートフォンを見ていた。

「修二、村上若様、飲みに来ませんか?」