藤田晴香は顎を上げ、小さな三つ編みが天を指すほど高く上がっていた。鈴木之恵がもっと早く彼女に丁寧に接していれば、さっきも本当に兄に連絡して来てもらう必要はなかったのに。
兄が来て秋山奈緒の今の様子を見たら、きっと心配して、気分を害して小遣いをくれなくなるに違いない。
藤田晴香は自分の携帯の残高を確認した。先月兄からもらったお金はすべて使い果たし、残っているのは陶山蓮華が補助してくれた分だけだった。親友の誕生日がもうすぐなのに、自分の立場を考えると、それなりの贈り物を用意しないわけにはいかない。
しょうがない、後で兄に取り入って、もう少しお金を引き出そう。
——
藤田深志は階下でタバコを一本吸っていると、村上拓哉からのメッセージが魂を呼ぶかのように次々と届いた。
【早く来て奥さんを助けてやれよ。ここにはウザい奴らがいるぞ。】
【おい、まだ来ないのか?奥さんがいじめられてるぞ。まだ取り戻す気があるのか?】
【早くあの馬鹿な妹を連れて帰れよ。もう出てこさせるな。あいつの頭は秋山の厚かましい奴に取り憑かれたのか?】
……
藤田深志は村上拓哉のメッセージに目を通し、携帯をしまってホテルの入り口へ向かった。
入り口の警備員は藤田深志を知っていたので、当然止めることはせず、むしろ恭しく案内した。
ホールは一様にフォーマルな装いの人々で、藤田深志は一通り見回した後、最終的に隅の白いスーツに視線を固定した。
彼の目が一瞬止まった。彼女は本当に以前とは違っていた。
今の彼女は有能で、賢明で、自信に満ち、キャリアウーマンとしての魅力を放っていた。それは彼が以前気付かなかった面だった。
三年の結婚生活で、彼は彼女を金の鳥かごの中で飼っていた。彼女は美しく、優しく賢かった。藤田深志は当時、彼女のような女性は飾り物として相応しいと思っていた。彼のカードで買い物をし、花を活け、楽器を少し習うような生活。仕事をするのは彼女には辛すぎるし、家にはお金も困っていなかった。
しかし、自分のそんな独断的な考えが彼女を束縛していたとは思いもよらなかった。
そして今の彼女は、より幸せそうに見えた。
藤田深志は我に返り、長い足で彼女の方へ歩き出した。