第327章 兄と呼ぶな

藤田晴香は怒りで言葉を失い、数人の女友達は小声で議論を始めた。

「私には藤田社長の鈴木さんを見る目つきが少し違って見えるわ。晴香が言うように秋山奈緒のことを好きというより、むしろ鈴木さんの方を好きなんじゃないかしら」

「『少し』なんて言葉は要らないわ。目は嘘をつかないもの。社長の言葉の中にあの女性への配慮が溢れていたのを聞かなかった?」

「でもあの女性には子供がいるのよ。他の男の子供を育てることになるのに、どの男がそんな子持ちの女性を受け入れるかしら。まさに他人の子供の父親になるってことじゃない!」

「疑う必要ないわ。社長がどれだけ乗り気か見てみなさいよ。鈴木さんの息子に服を買ってあげて、自ら選びに行くなんて。正直、私の父は一度も私に服を買ってくれたことないわ」