第323章 彼女を売り払っても借金は返せない

秋山奈緒は一瞬呆然となった。周りを見渡すと、最も激しく金を返せと迫っているのは、以前彼女を最も持ち上げていた人々だった。彼女は今でも覚えている。以前彼女に酒を勧めた時の、あの人たちの追従的な態度を。それが一転して、今では彼女を追い詰めようとしている。

人情の冷たさとはこんなものだ。

彼女が勢力を失うと、誰もが踏みつけようとする。

「金を返せ！」

「金を返せ！」

「金を返せ！」

……

みんなスローガンを叫ぶように彼女に向かって怒鳴り、それぞれが鬼のような形相で、彼女を追い詰めていた。

秋山奈緒は一時的に途方に暮れ、鈴木之恵のあの明るい顔を見ると、嫌悪感と憎しみが込み上げてきた。こんな大事なことを、なぜ彼女の一言で皆が信じるのか。

「あなたは口から血を吐くような嘘をついている。私の父は一生懸命に法を守って生きてきた人です。そんな悪いことをするはずがない。皆さん、彼女の言うことを信じないで。この女は秋山家と恨みがあるから、わざと中傷しているんです！」

鈴木之恵は、秋山奈緒が「法を守る」という言葉を秋山泰成に使うのを聞いて、おかしくなった。これは自己批判ではないのか？

賭博と麻薬、秋山泰成は二つに手を染めていた。どこが法を守っているというのか？

この時、弁護士は脇に抱えていたブリーフケースを開き、秋山泰成の公金横領の証拠を全て皆の前に提示した。

「私のクライアントの言葉は一言も偽りではありません。皆さん、これらの証拠をご覧になれば分かります。秋山泰成はここ数年で会社の口座から37億6,252万円を横領しました。端数は切り捨てています。これらの金は全て彼の個人的なポケットに入りました。」

主要な株主たちは怒りで気が狂いそうだった。

彼らは秋山泰成と共に起業し、最初の数年は投資家を見つけられず、車や家を売って投資し、やっと会社を立ち上げた。

秋山泰成は彼らに約束した。自分に食べるものがある限り、仲間たちを飢えさせることはない、皆で一緒に稼ごうと。しかし結果はどうだ？会社が行き詰まりそうな時は一蓮托生で、皆が価値のあるものを売って会社に投資したのに、儲かった金は密かにあの老狐一人のポケットに入っていた。

彼らの手に入ったのは秋山泰成の端数に過ぎなかった。

人の心は変わったものだ！