鈴木之恵は関連書類を取り出し、皆に見せた。
「今、私がこの会社の筆頭株主です。皆さん、前に来て確認してください。」
この言葉に、その場にいた全員が凍りついた。藤田晴香たちの野次馬も会話を止め、今まさに起きている出来事に注目した。
皆は秋山奈緒への追従を止め、互いに顔を見合わせ、誰も口を開く勇気がなかった。
先日の株主総会で、会社の二つの勢力が対立していた時、社長の娘が出てきて事態を収拾した。やっと状況が落ち着いたと思ったら、今度は若い女性が現れて自分が筆頭株主だと言い出した。
彼らは信じられなかったが、重大な問題なので、心の中で疑問を持っていても誰も声を上げる勇気がなかった。
この時、会社の大株主の一人が前に出て、鈴木之恵が持っていた書類を見ると、表情が凍りついた。再び顔を上げて鈴木之恵を見つめ、その目には敬服と驚きが浮かんでいた。
我慢できなくなった人が前に出て尋ねた。
「張本社長、そこに何が書いてあるんですか?早く教えてください!」
「張本社長、張本社長...」
張本社長は我に返って言った。
「株式の51パーセントを保有しています。確かに我が社の筆頭株主です。」
場内が騒然となった。
秋山社長があれほど長年会社を経営してきたのに、実は我が社の筆頭株主ではなかったとは!
筆頭株主は会社で最も発言力を持つ人物だ。ここ数日で会社の情勢が落ち着いたばかりなのに、また一変することになる。
皆は黙って、この筆頭株主の次の行動を待った。
鈴木之恵は皆が徐々に静かになり、書類も確認して彼女の持株比率を知ったことを見て取ると、続けて話し始めた。
「私は秋山奈緒さんの当社への入社を認めません。小川淳氏を秋山実業の最高経営責任者に任命します。異議のある方は今、申し出てください。」
こんな大事なことで、会社の一般社員たちは傍観するしかなく、発言権などなかった。幹部たちは小声で議論を始めた。
「一体誰の言うことを聞けばいいんだ?」
「誰の言うことを聞くかって、当然筆頭株主の言うことだろ。我々が意見を出しても形だけのことさ。出したところで本当に通用すると思うのか?」
「誰が上に立つかは重要じゃない。重要なのは我が社に利益をもたらせるかどうきだ。あの秋山奈緒は実際悪くないと思う。さっき村上若様が直接我々と協力を話し合うと言っていたじゃないか。」