藤田深志は力なく溜息をつき、
「今村執事、これらの物は、私が少し残して、残りは下山する時に持って帰ってくれないか?」
今村執事は二人の小さな子供を見つめ、目が輝いていた。なんて可愛いんだろう?思わず頬をつねりたくなった。
「今村執事?」
藤田深志がもう一度呼びかけると、今村執事はようやく我に返り、
「若様、旦那様からこれら全てを必ず届けるようにと言われております。一つも欠かすことはできません。この老いぼれに無理なお願いはしないでください。」
彼は言えなかった。旦那様が子供たちをよく観察して、帰ってから報告するようにと頼まれていたことを。
傍らでは、テントが既に設営されていた。超大型の家族用で、四人家族が十分に入れる大きさだった。二人の子供たちは興奮していた。これが父と母と一緒の初めての旅行だった。たとえ今は実の父に対して心に壁があっても、この瞬間の興奮で、ダメ父にポイントを加算していた。