第372章 誰を抱きしめるか分からない

鈴木之恵が弘美を連れて階下に降りたのは、一時間後のことだった。

階下では父子二人が待ちくたびれていた。

藤田深志は温めた牛乳を家族四人分用意し、一人一杯ずつ配った。彼は鈴木弘文と鈴木弘美がコップの牛乳を飲み干し、コップを洗い終えるのを見届けてから、探るように尋ねた。

「もう寝る時間かな?」

二人の子供たちは父親の本心を理解せず、ただ早く休ませたいのだと思い、素直にテントの中に入り、自分の場所に横たわった。

中に入ってから弘美は念を押すように強調した。

「ママ、パパも一緒に来てね、私も一緒がいい。」

鈴木之恵は半ば強制的にテントに入り、弘美の横に寄り添った。リビングの電気が消され、窓からは淡い月明かりが差し込んでいた。

弘文は日中の疲れで、目を閉じるとすぐに規則正しい寝息を立て始めた。