鈴木之恵はキッチンの片付けを終えて、そのまま二階に上がった。アシスタントの木村悦子から連絡が入り、不満を漏らしていた。
【芽さん、いつ戻ってくるの?こちらではあなたの直接の確認が必要な書類が山積みになっていて、デザイン部の設計図もあなたの最終チェックが必要なのよ。これ以上戻ってこないと、みんなの仕事への意欲が散漫になってしまうわ。】
鈴木之恵は、この間木村悦子が間に立って仕事の調整をしてくれているものの、みんなの仕事への意欲が低下していることを知っていた。彼女が不在の間、カーマグループの仕事の進捗はかなり緩んでいた。このままズルズルと引き延ばせば、ブランドも何もあったものではない。会社が倒産しないだけでもましな方だろう。
【来週戻るわ。それまで持ちこたえて。】
【芽さん、早く戻ってきて。みんなあなたを待ってるの。うぅ~】
鈴木之恵は仕事のメールをいくつか処理した後、退屈だったので個人のメールボックスにログインしてみると、海外からの英文メールが静かに眠っていた。日付を見ると先週受信したものだった。
彼女はそのメールを丁寧に読んだ。
【Dear Miss バリー,every word is like a face.
This is スメル本社 headquarters. The perfume you developed has won the most popular award of our company in five years. The award ceremony will be held on the 8th of next month. Welcome to the ceremony.
】
訳:親愛なるバリー様、お手紙拝見いたしました。
こちらはスメル本社です。あなたが開発された香水「魅惑」が、当社の過去5年間で最も人気のある賞を受賞しました。授賞式は来月8日にフランスで開催されます。ご出席をお待ちしております。
鈴木之恵はこのメールを見て深い思考に陥った。特にバリーという英語名について。この名前を初めて聞いたのは、藤田晋司と親しい外国人の口からだった。
推測するに、バリーは自分と同じ容姿を持つ女性のことだろう。