第369章 なだめる

階上で、鈴木之恵はベッドに横たわって放心状態だった。

藤田深志がそこまでするはずがないと思い、先ほど自分が怒りに任せて言い過ぎたと感じた。

鈴木之恵は八木真菜に電話をかけた。

「真菜、ちょっとお願いがあるんだけど」

八木真菜はまだ八木修二の家にいて、ため息をついた。

「私に遠慮することないでしょう。何でも言って、姉妹として出来ることなら断らないわ」

「あなたの旦那さんに相談したいことがあるの」

そう言って、鈴木之恵は付け加えた。

「秋山奈緒のことについてなの」

八木真菜は今入ってきた男性を見て、

「ちょうど私を迎えに来たところよ。電話を代わるから、直接聞いてみて」

「ありがとう」

鈴木之恵は冷静になって、専門的なことは専門家の意見を聞くべきだと思い、一人で悩んでも仕方ないと気づいた。

彼女は事の経緯を詳しく橋本さんに説明し、最後に相手から返ってきた答えは、

「この判断は確かに妥当ですね」

鈴木之恵は電話を切り、ベッドに横たわってこの件を少しずつ消化していた。寝室のドアがノックされ、次の瞬間藤田深志がドアを開けた。

「之恵、起きて何か食べない?」

鈴木之恵が食欲がないと言おうとした時、藤田深志は既に数個のテイクアウトの袋を持って入ってきた。

彼はそのパッケージを開け、中身を一つずつ取り出してベッドサイドテーブルに置いた。小さなベッドサイドテーブルは重みに耐えかね、すぐに一杯になった。

彼は最後のパッケージを開け、タピオカミルクティーを取り出した。

鈴木之恵はその様々なケーキを見て、思わず唾を飲み込んだ。スイーツに心動かされない女性なんていない。体型を気にしなければ、スイーツを主食にできるくらいだった。

彼女は藤田深志が開けたテイクアウトの袋のロゴを見た。京都府で最も有名なスイーツ店で、以前京都テレビのニュースにも取り上げられた店だった。ずっと欲しかったけど、思い切って買ったことはなかった。

藤田深志は淡々と言った。

「どれが好きか分からなかったから、適当に買ってみた。まず試してみて、どれが美味しいか教えてくれれば、次回は分かるから」

鈴木之恵は心の中で、これが適当に買うということ?店の全種類を買ってきたんじゃないかと思った。