藤田深志は今村執事に電話をかけ、簡単に状況を尋ねたが、子供たちを連れて行くことについては触れなかった。
以前、彼は病院でお爺さんを怒らせることが多く、後にお爺さんは彼の病院訪問を禁止し、彼を見ると具合が悪くなると言った。藤田深志は毎回病院に行っても姿を見せることができず、廊下で密かに様子を伺い、医師と病状について話すだけだった。
今回は、お爺さんの前で顔が立つと思った。子を持つ親の威光というものは、お爺さんの所では絶対に通用するはずだ。
車は病院に停まった。
藤田深志はドアを開けて二人の子供を抱き下ろし、手を繋ごうとした。鈴木弘美は比較的協力的で、おとなしくパパと手を繋いだ。鈴木弘文は手を繋がせず、鈴木之恵の方に走って行き、最終的にパパとママがそれぞれ一人ずつ手を繋いで入院棟へ向かった。
その時、お爺さんは点滴を終えたところで、手にはまだテープが貼られていた。
今村執事が懇々と諭すように言った。
「お爺様、栄養粥を少し召し上がってください。そうしないとお腹が痛くなりますよ。」
本邸の厨房から届いた食事は温めたままで、お爺さんは朝から食欲がなく、咳で喉も痛く、少し口をつけただけで放置していた。
「後にしておこう。お腹が空いたら食べる。」
今村執事は困った顔をして、
「さっきもそうやってごまかされましたが、もう一時間以上経っているのに、まだお箸を付けようとされない。食事を取らなければ、いつ体調が良くなるのでしょうか?」
お爺さんは聞き飽きた様子で、低い声で言った。
「今村さん、あなたも年を取って、ますます口うるさくなったな。奥さんは煩わしく思わないのかね?」
お爺さんは首を振りながら更に皮肉を言った。
「私の妻が生きていれば、私はあなたのようにこんなに口うるさくはならなかっただろう。残念ながら、私もこの年まで生きて、彼女と再会する日も遠くないがね。」
今村執事はお爺さんがまた戯言を言い出したと思い、
「お爺様、何を仰るのですか。まだひ孫を抱いていらっしゃらないでしょう。奥様との再会は、ひ孫を十分に可愛がってからにしてください。その時になって奥様にお話しできるではありませんか。」
ひ孫の話が出ると、お爺さんの疲れた顔に笑みが浮かんだ。