第387章 やはり思いやりのある人を見つけなければ

藤田深志は秋山奈緒の手の電子ブレスレットを見て、

「執行猶予じゃないのか、何を走り回ってるんだ?」

「執行猶予でも定期的な妊婦健診は必要よ、上からも許可されてるわ」

藤田深志は唇の端に嘲笑を浮かべ、

「そうだな、大切に守らないとな」

お腹の切り札がなければ、執行猶予なんて得られなかったはずだ。

「邪魔だから、どいてもらえる?行かなきゃならないの」

藤田深志が車のキーを押すと、秋山奈緒は車のボンネットに寄りかかったまま、どく気配を見せなかった。

その時、藤田深志のポケットの携帯が激しく振動した。取り出して見ると、鈴木之恵からの電話だった。出発前に何度も念を押されていた、飛行機が着いたら真っ先に電話するようにと。時間から見て、ちょうど到着したところだろう。

彼はすぐには電話に出ず、秋山奈緒は腕を組んで冷静に彼を見つめていた。数秒後、彼女はボンネットから歩み寄ってきた。

藤田深志は次の瞬間、電話を切ってポケットに戻した。

「深志さんはなぜ出ないの?お姉さまに私に会いに来たことを知られたくないの?」

「俺が、お前に会いに来た?」

藤田深志は皮肉っぽく笑って、

「笑わせるな!」

秋山奈緒はこういった冷ややかな態度にもう免疫ができていて、相変わらず淡々と彼の車のドアに寄りかかったまま、

「じゃあ出てみたら?私もちょうどお姉さまに聞きたいことがあるの。私たち姉妹、久しく心を通わせていないから」

「帰れ。お前の子供を大切にしろ。今はそれがお前の切り札なんだからな」

子供の話が出て、秋山奈緒の表情が徐々に冷たくなった。彼女は彼が自分にあの命取りになりそうな薬を飲ませた時の残虐さを思い出した。彼は自分を心底憎んでいるのだ。

秋山奈緒は表情を引き締めて道を空けた。

藤田深志は彼女を一瞥もせずに、車を発進させて病院を後にした。

鈴木之恵は飛行機を降りたところで、お婆様が運転手を寄越していた。出発前の彼の惨めな表情を覚えていたので、電源を入れてすぐに無事を知らせる電話をしたのに、彼は出なかった。

彼女は心の中で悪態をつき、携帯をバッグに戻した。

鈴木家の別荘。