第415章 まあまあかな

二人がオフィスを出ると、数十の視線が一斉に向けられた。

鈴木之恵は木村悦子にひと言言っておく必要があると感じた。彼女のクールなキャリアウーマンというイメージを守るため、この一件で崩れてはいけないと思った。

階下に着き、車に乗った。

藤田深志は柏木正を運転手として連れてこなかったため、鈴木之恵は助手席に座り、携帯を抱えて木村悦子にメッセージを送った。

【今日のことは絶対に言いふらさないで。さもないと給料カットよ！！！】

鈴木之恵のこの小さなアシスタントは単純な性格で、普段から彼女とはふざけ合うような関係だった。鈴木之恵は彼女を妹のように扱い、上司として威張ったことは一度もなかった。

鈴木之恵はこのような警告的なメッセージを送り、木村悦子が次の瞬間に泣き顔の絵文字を送ってきて、両目を潰して毒を飲んでも絶対に口外しないと約束するような返信を期待していた。

しかし予想に反して、木村悦子は今、会社の私的なグループチャットで盛り上がっており、彼女からの警告メッセージに全く気付いていなかった。

【みんな、私が今見たものを知りたい？うぅ、私の純真が失われちゃった。】

皆は彼女が社長と親しい関係で、社長室の出入りも日常的だということを知っていた。そして先ほど社長室に誰が入ったかも目撃されており、みんな内心で噂話を期待していた。

木村悦子のこのメッセージが投稿されると、ゴシップ好きのメンバーたちがすぐに反応し、長い間静かだったグループが一瞬で活気づいた。

【何を見たの？詳しく話してよ、私たちを他人扱いしないで。】

木村悦子は具体的なことは言わず、みんなの好奇心を煽るだけだった。

【それは...恥ずかしくて言えないわ。甘くてスムーズなタピオカミルクティーで胸のモヤモヤを押し下げる必要があるかも。】

メッセージを送ると、すぐに誰かがタピオカミルクティーの注文画面のスクリーンショットを送ってきた。

【タピオカミルクティーの準備完了！さあ、話を聞かせて！】

【藤田社長が...あぁ、なんでもない。その、仕事に戻らなきゃ。】

木村悦子が意図的に話を濁すと、口を開けて噂話を待ち望んでいた人々は彼女の言葉に息を呑んだ。結局話すのか話さないのか？話を途中で切るなんて人を殺す気か！

大勢がナイフの絵文字を送ってきた。