話している間に、警備員が来た。
「何かありましたか?」
カーマグループの従業員たちはお互いを見合わせ、誰も話す勇気がなく、全員が自分の席に戻って仕事をしているふりをした。藤田社長のスキャンダルは聞き流すだけにしておこう。知れば知るほど命が危ない。藤田社長は人を破産まで追い込める人物だ。今日のことは腹の中にしまっておこう。誰も軽々しく話せない。
陶山蓮華は再び部屋の中を見た。鈴木之恵はまだのんびりとデスクに寄りかかり、コーヒーをゆっくりと味わっていた。彼女は今、この女が自分を相手にする気がなく、ただ警備員に対処させようとしているだけだと気づいた。
陶山蓮華は鼻を鳴らした。自分がどんな身分か、あの狐女に追い出されるいわれはない。
「手を出さないで、自分で帰ります!」