第429章 少し求婚みたい

藤田深志は一番大きいのを選び、店員が剥こうとしたのを制止した。

最後に会計を済ませ、三重の袋に入れて車に持ち込んだ。

普段はドリアンの匂いが嫌いだったが、妻を喜ばせるためなら、この程度の困難は乗り越えられた。

駐車場に着くと、彼は車の後部ドアを開け、鈴木之恵を先に乗せてから、自分も隣に座った。

「之恵、私が剥いてあげる」

藤田深志は使い捨て手袋をはめ、ドリアンの殻の割れ目に沿ってゆっくりと開いていった。黄金色の果肉は食欲をそそるほど豊かだった。車内はすぐにドリアンの香りで満たされた。

鈴木之恵は唾を飲み込んだ。錦園にいた頃、ドリアンのミルクレープを家に持ち帰ると、彼は嫌がってベランダで食べさせ、食べ終わったら直ちに包装を片付けなければならなかったことを思い出した。