「之恵、仕事終わった?まだ食事してないでしょう?」
「おじいちゃん、私たち二人とも今仕事が終わったところよ」
老人は笑いながら言った。
「二人の会社が近くにあるのはいいことだね。深志が今回選んだオフィスの場所はいい。お昼は一緒に食事ができるし、夜も一緒に帰れる」
藤田深志は黙々と冷蔵庫から食材を取り出し、肉、卵、野菜をたくさん取り出した。老人は目の前でこの若者が自分の冷蔵庫を空っぽにして、妻を連れて上階に行くのを見ていた。
このやんちゃ者は今や妻のことしか頭にない!
藤田深志は持ち帰った食材をキッチンに置き、特にドアがきちんと施錠されているか確認した。前回のような気まずい状況を避けるためだ。
おじいちゃんを避けているわけではなく、ただもう一度あんなことが起これば、妻の機嫌を直すのは本当に難しくなるだろう。
二人はキッチンで一緒に野菜の下ごしらえをし、普通の夫婦の日常のようだった。
「幼稚園がもうすぐ始まるわ。入園式は一緒に行きましょう」
藤田深志は野菜を洗いながら、手を止めた。まだ二人の子供の保護者会に参加したことがなかったが、入園式には必ず行かなければならない。
「もちろん行くよ」
「うん、9月1日よ。時間を忘れないでね。これを忘れたら、娘と息子が1ヶ月くらいあなたと口を利かなくなるわよ」
藤田深志は野菜をざるに上げ、また別の野菜を洗い始めた。自分の子供時代を思い出すと、保護者会にはいつもおじいちゃんが行っていて、両親はほとんど行ったことがなかった。
今思えば少し残念だ。藤田正安と陶山蓮華が一緒に学校に来たことは一度もなかった。
「安心して。10億円の大口契約を忘れても、子供たちのことは忘れないよ」
鈴木之恵は切った肉を器に入れ、横に寄りかかって深く考え込んだ。しばらくして口を開いた。
「明日準備して、明後日京都府に飛ぶつもり。時間的に大丈夫?」
藤田深志はうなずいた。
「大丈夫だよ」
「じゃあ木村悦子に航空券を予約してもらうわ。今日帰ったら家族にも言っておかないと。このことはおばあちゃんたちも知らないの」
食事の後、二人はソファでぼんやりとテレビを見ていたが、テレビで何をやっているのか二人とも頭に入っていなかった。
鈴木之恵は横目で藤田深志を見た。
「私があなたの荷物を整理しましょうか?」