「藤田深志?」
彼女は何の前触れもなく呼びかけ、藤田深志は顔を下げた。
「ん?」
「あなたは秋山泰成の他の弱みも握っているの?なぜ全部出さないの?」
藤田深志は我に返り、映画がもう終わっていることに気づいた。だから彼女に話しかける余裕があったのだ。
「他にはたいしたものはない。彼の巨額横領に比べれば大したことじゃない。面会室での発言は脅しだった」
鈴木之恵の目に失望の色が浮かんだ。
「本当に彼の弱みを握っていて、秋山泰成の刑を重くできると思ったのに。面会室での話は本当みたいだったのに」
藤田深志は少し黙った。
「あの老いぼれが本当のことを話さないと思ったから、それで脅すしかなかった。実際、私の言葉には矛盾が多かったはずだ。一時的に混乱させただけで、後で考えれば分かったはずだ」