鈴木之恵はこめかみを揉みながら、
「30分ほど待ってもらえる?」
藤田深志は答えた、
「問題ないよ。ゆっくりやって、僕が付き合うから」
鈴木之恵は仕事に戻り、忙しさから解放されたのは1時間後のことだった。
藤田深志は本来、彼女を南国レストランに連れて行って新メニューを味わってもらおうと思っていたが、彼女の忙しそうな様子を見て声をかける気にならず、レストランに料理を作らせて、デリバリーを頼んだ。
ちょうど鈴木之恵もお腹が空いていたので、二人は小さな丸テーブルで弁当を広げた。
南国レストランの料理は益々洗練されていた。藤田深志が以前京都府から二人のシェフを引き抜いたのは、本来、鈴木之恵に本場の京料理を食べてもらうためで、利益は度外視していた。レストランで儲けようとも思っていなかった。